ランチの熱狂　料理人の静寂

私たちは確かに、料理を通じて
コミュニケーションをしていた。

人気店のランチタイムは熱気に満ちている。いつもと同じ味わいを、もしくは、新しい美味しさを求めて人びとの期待のボルテージは高まるばかり。
その熱を受け止めながら、料理人は一品一品を丹念に仕上げていく。テーブルと厨房はつながっている。言葉を交わさずとも、私たちは確かに料理を通じてコミュニケーションしているのだ。

シェフの優しさが素材を生かす

一脚ずつ集められたアンティークチェアと真っ白な空間がひと味違う洗練を醸し出すイタリアンレストラン。独特のセンスは料理にも共通している。シェフ自ら鈴鹿市の契約農園で成長を見守ったリーフ野菜や知多半島の根菜類、目の前のガーデンで摘み取ったばかりのハーブは、普段食べているものと同じとは思えないほど新鮮で味の主張が鮮烈。伊勢湾・三河湾などの魚介類や地元のブランド肉も、素材本来の旨味や食感を引き出すように調理され、滋味豊かで食べた後に身体が重くならない。コース料理は月替わりで、旬の食材を主役にしたストーリー仕立て。料理に込められたメッセージを時には唄い上げるというマネージャー兼ソムリエ・加藤裕之さんの楽しいトークにファンも多い、食を通じた時間を味わう場だ。

達人の出汁が心を満たす

京都で修行後、名古屋の料亭で関東の味を学び副料理長まで務めた経歴を持つ店主。東西の味付けや素材の旬、流通の違いを知り尽くした料理人だ。「関西の食は薄味ではなく、出汁が出やすい軟水ゆえの薄塩」との一言からも、日本料理を広く俯瞰している様子がうかがえる。そんな彼がめざすのは、東西の良さを生かしつつもこの地域に受け入れられる味。真昆布とキハダマグロ節を使って提供寸前に引く出汁と、目利きの技で選んだ食材を使い、丁寧な仕事を施した会席料理を提供する。化学調味料や既製品を一切使わない本物のおいしさとすっきりした後味には舌が驚くほど。食を楽しんでほしいとの思いからしつらえられた桜の木のテーブルで、大きな窓から景色を眺めながら一流の味を堪能できる。

個性が生み出す主張するパスタ

開業17年目を迎えた創作イタリアンの実力派。もともとはスパゲッテリアとしてスタートしただけあって、ベースソースを使い分けた約50種類のパスタメニューが圧巻。その味は、シェフ自ら「我が強いイタリアン」と表現するインパクトが特徴だ。たとえば、たっぷりのトマトソースはアンチョビの隠し味とピリッとした辛みが後を引きクセになる。パスタは茹で汁で岩塩を吸わせ、必ずフライパンでソースに絡めて熱々をサーブ。一皿ごとに熱の入れ方を加減しタイミングよく仕上げる職人技だ。軽やかな味わいの前菜と評価の高い本格派の一品料理、手づくりドルチェまでメリハリの利いたコース構成も魅力。インテリアデザイナー時代の技を生かして内装を手掛けた店の隅々にまでシェフの個性が光る。

ネタと価格にこだわりあり

寿司職人の握りを目の前のカウンターでいただける本格派。しかも、すべてのネタ１貫150円均一を貫くとあれば、席を待つ人が引きも切らない人気も当然だ。三河湾でとれた旬の地魚や貝類を中心に、専門店から極上品だけを仕入れるマグロ、ウニやボタン海老などが揃うこだわりのネタも魅力。オーダーは2貫からが基本だが、ランチタイムにはおすすめを1貫ずつ味わえて味噌汁などもつくセットメニューがある。一番人気はシャリから大胆にはみ出る大穴子。母店である地元の老舗懐石料理店で60年以上つぎ足されてきたタレが、ふんわりとした肉厚の身と絡んで口のなかでほどける。光り物の酢締めの塩梅や、空気を含んだ酢飯のうまさに唸り、財布の心配をせずに寿司で満腹になる幸福を味わえる。

次回はHANTO特集エリアチタフォルニア前編#1
「太陽と空、海を愛す。BEACH LIFE!!」をお届けいたします。お楽しみに！